[OSM-ja] ODbLオンライン勉強会(その5)

Shu Higashi s_higash @ mua.biglobe.ne.jp
2012年 6月 22日 (金) 13:07:14 BST


ODbLの重要なポイントとなる用語の定義(前半)です。


The Licensor (as defined below)
許諾者(以下に定義する。)

and
及び

You (as defined below)
あなた(以下に定義する。)

agree as follows:
上記の当事者は、以下のとおり合意する。

1.0 DEFINITIONS OF CAPITALISED WORDS
1.0 用語の定義

“Collective Database” - Means this Database in unmodified form as part
of a collection of independent databases in themselves that together
are assembled into a collective whole. A work that constitutes a
Collective Database will not be considered a Derivative Database.
「集合データベース」とは、改変を受けていない本データベースが、独立したデータベース集合体の一部となった場合において、一体的な統一体として構築されたその集合体を意味する。集合データベースを構成する著作物は、派生データベースとはみなされない。

//----メモ(ここから↓)-----------------------------
ODbLを継承する必要が無いケースを明らかにするための概念のひとつ。何をもって「集合データベース」と判断するかは、まだ合意形成の途上と思われます。現在のところ、Leagal
FAQ (http://wiki.openstreetmap.org/wiki/JA:Legal_FAQ/ODbL)
の3c.にあるように、「名前」や「位置」のようなシンプルな判断基準で他の地理データベースと連携している場合は「集合データベース」と考えられる、とされています。
OSMと他の地理データベースを組み合わせたサービス提供等を考える場合には、「集合データベース」とみなされる使い方から外れると、他の地理データベースにもODbLを適用する必要があるため重要なポイントになります。
今後、実際のユースケースに応じて確認と検討が必要と思われます。
------メモ(ここまで↑)---------------------------//

“Convey” - As a verb, means Using the Database, a Derivative Database,
or the Database as part of a Collective Database in any way that
enables a Person to make or receive copies of the Database or a
Derivative Database. Conveying does not include interaction with a
user through a computer network, or creating and Using a Produced
Work, where no transfer of a copy of the Database or a Derivative
Database occurs.
「移送」とは、動詞として使用した場合、ある者に本データベース又は派生データベースの複製を作成又は受領させることを可能にする何らかの方法で、本データベース、派生データベース、又は集合データベースの一部としての本データベースを利用することを意味する。コンピューター・ネットワークを通じたユーザーとの相互通信、又は製作著作物の創作若しくは利用のうち、本データベース又は派生データベースの複製の移動が発生しないものは、「移送」に含まれない。

//----メモ(ここから↓)-----------------------------
「移送(Convey)」はODbL要約でいう「頒布」に相当します。個人的にはCCなどで使われている著作物のDistribution
との違いについて、どういう区別を意図して使っているのかをイマイチ把握しきれていません。
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“Contents” - The contents of this Database, which includes the
information, independent works, or other material collected into the
Database. For example, the contents of the Database could be factual
data or works such as images, audiovisual material, text, or sounds.
「コンテンツ」とは、本データベースの内容物を意味し、情報、独立した著作物、その他の資料であってデータベース内に収集されたものが含まれる。例えば、データベースのコンテンツとしては、事実データ、又は画像、視聴覚資料、テキスト、若しくは音声などのような著作物が挙げられる。

//----メモ(ここから↓)-----------------------------
データベースとそのコンテンツは区別されます。
------メモ(ここまで↑)---------------------------//

“Database” - A collection of material (the Contents) arranged in a
systematic or methodical way and individually accessible by electronic
or other means offered under the terms of this License.
「データベース」とは、系統的又は組織的な方法で分類した資料(コンテンツ)の集合体であって、電子的方法あるいはその他本ライセンス条項に基づき提供される方法によって個別にアクセスが可能なものを意味する。

//----メモ(ここから↓)-----------------------------
日本の著作権法上のデータベースは、「論文、数値、図形その他の情報の集合物であって、それらの情報を電子計算機を用いて検索できるように体系的に構成したもの」(2条1項10号の3)と定義されています。上記本文での定義と文面の上ではよく似ています。
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“Database Directive” - Means Directive 96/9/EC of the European
Parliament and of the Council of 11 March 1996 on the legal protection
of databases, as amended or succeeded.
「データベース指令」とは、データベースの法的保護に関する1996年3月11日の欧州議会及び欧州理事会による指令96/9/EC(その修正又は後継を含む。)を意味する。

“Database Right” - Means rights resulting from the Chapter III (“sui
generis”) rights in the Database Directive (as amended and as
transposed by member states), which includes the Extraction and
Re-utilisation of the whole or a Substantial part of the Contents, as
well as any similar rights available in the relevant jurisdiction
under Section 10.4.
「データベース権」とは、データベース指令(その修正、及び加盟国による国内法への置き換えを含む。)の第3章(スイ・ジェネリス特別権)に基づく権利を意味し、コンテンツの全体又は実質的部分の抽出及び再利用、並びに第10.4条に基づいて関連する法域で行使可能な類似の権利を含む。

//----メモ(ここから↓)-----------------------------
EUの「データベース権」はデータベースコンテンツの獲得、認証、提供に対して、質的または量的な投資が行われている場合に認められます。認められた結果として、コンテンツの全部、あるいは実質的な部分に対して、抽出または再利用することを防止する権利がデータベース作成者に付与されます。
日本では(米国も)この「データベース権」が存在しないため、翼システム事件などのデータベースに関わる裁判では著作権法やその他の法令とのあわせ技による判例がいくつかあります。
(参考: http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20090827/336140/ )
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“Derivative Database” - Means a database based upon the Database, and
includes any translation, adaptation, arrangement, modification, or
any other alteration of the Database or of a Substantial part of the
Contents. This includes, but is not limited to, Extracting or
Re-utilising the whole or a Substantial part of the Contents in a new
Database.
「派生データベース」とは、本データベースに基づくデータベースを意味し、本データベース、又はコンテンツの実質的な部分についての翻訳、翻案、調整、改変、その他の変更が含まれる。これには、コンテンツの全体又は実質的な部分を新規のデータベースにおいて抽出又は再利用することなどが含まれるが、これに限定されるものではない。

//----メモ(ここから↓)-----------------------------
「派生データベース」とは、著作物でいえば二次的著作物に相当し、OSM地理データの利用形態としては「集合データベース」と対をなす概念で、ODbLの継承が必須となります。まるごとコピーして改変した場合だけでなく、データベースの中核となる「実質的」な部分であれば一部の利用であっても該当します。例えば宝の隠し場所マップデータがあるとすれば、そこにある緯度経度情報はたとえデータベースのごく一部であったとしても「実質的」な部分と思われます。
(Legal FAQ の3b.参照: http://wiki.openstreetmap.org/wiki/JA:Legal_FAQ/ODbL )
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“Extraction” - Means the permanent or temporary transfer of all or a
Substantial part of the Contents to another medium by any means or in
any form.
「抽出」とは、コンテンツの全体又は実質的な部分を、何らかの方法又は形式によって、他の媒体に恒久的又は一時的に移送することを意味する。

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「抽出」は「派生データベース」とみなされる要件のひとつです。
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ODbL本文の対訳(非公式ドラフト)
http://wiki.openstreetmap.org/wiki/OSMFJ/ODbL/1.0/text


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