[OSM-ja] 本の紹介: 世界測地系と座標変換
Taro Kawahara
tarokawa @ mqj.biglobe.ne.jp
2010年 11月 20日 (土) 03:42:49 GMT
面白い本を見つけたので紹介します。
「世界測地系と座標変換」飛田幹男著 日本測量協会
http://www.amazon.co.jp/dp/4889410147
OSMでは、GPSの測地系であるWGS84が使われていますが、
日本地図で使うITRF97(Tokyo97)や、ITRF2000とは違う
ものです。 ところが、違うっていわれても、具体的に
どう違うの? っていうのは、なかなかややこしくて
よくわからん、という人が多いのではないでしょうか。
このあたりが具体的に、わかりやすく説明されている本です。
WGS84とITRF2000の差はそれほど大きくはないので、ふだん
GPSログを使ってマッピングする分にはさほど気にすることは
ありませんが、1mっていうような小さな単位では違うので、
精度があがってくると気にする必要がでてきます。
ただ、WGS84とITRF2000が実は高精度に変換することが
できないってこともこの本を読んでわかりました。
WGS84は、アメリカの Defense Mapping Agencyが定義している
GPS衛星の座標系ですが、この座標系、ユーザーには無断で
毎年プログラムの改定が行われていて、毎年、数メートル単位の
変動があるそうです。また、ITRF2000は、パルサー天体600個を
世界各地で精密に観測することで得た高精度の座標系ですが、
WGS84は、アメリカの座標系でアメリカ国内の基準点だけを
アメリカ外では精度が低いのだそうです。
GPSでは、毎年、違う座標値が出てくる、という話は知らなかっただけに
意外でした。そりゃ厳密には変換できないわ。。。 ただ、
違うといっても1〜2メートルの違いだけなんで、ふつうの生活で
気にすることはないです。そもそも、通常使用時のGPSロガーは
そこまで正確な座標値を示さないし、OSM地図も現時点ではそこまで
正確ではない。
ただ、1997年以前のGPS測量結果は、同じWGS84でも100メートル近い
ギャップがあるそうなので、古いGPSログには要注意のようです。
WGS84は精度が低くても、GPSは簡便なリアルタイム測量が可能である、
という捨てがたい、というより、OSMにとってはOSMが存在できる理由に
かかわる巨大メリットがあるので、OSMでWGS84を使うというのが
合理的判断と思いました。
しかし、WGS84は世界測地系ITRF2000とも日本のITRF97(Tokyo97)とも
違うものであるということには常に留意する必要があります。(特に
1m単位の編集などをするのであれば)
今後はGPSが唯一のリアルタイム測量手段というわけではなくなってきて、
欧州版のGalileo Project, ロシアのGLONASSシステム、日本の
準天頂衛星みちびき、などが利用可能になってきます。これらの
新しいシステムは ITRF2000 での値が得られ、また測量精度自体も
GPSより高精度となるようですから、そのとき、OSMもWGS84から
ITRF2000へのデータ移行が検討されるのではないかと思いました。
# 蛇足ですが、注目はやっぱりGLONASSですよねぇ。。。
もうひとつ、麻布の日本経緯度原点にGPSロガーを持っていったら、
日本の測量法で定められた座標値が表示されるのだろうか、、、という
疑問にも答えが見つかりました。 実は、同じ値は表示されない
ようです。 座標系違うから^^; それに、えっと思ったのですが、
実はこの原点での GPS 測量自体行われていないのです。この地点は、
近くにビルが建っていて空が充分に見えていないので GPS測量に
ふさわしくないポイントなんだそうです。確かに Google Map で
みられる航空写真をみると、北側にビルがあってその影響を大きく
受けそうだ。 Google Map では測量法の座標値を入れるとこの原点
ピッタリの場所が表示されますが(ズームしてくと座標石が見えて
その石の上のプレートの十字の線が見えるとこまでピッタリ
あってますが)それってつまり、Google Map はWGS84ではなくて
ITRF2000基準だってことですね。
こうした話がわかったので、面白い本でした。
日常のOSMのマッピングにはあまり関わらない、高精度の座標データの
扱いに関する本ではありますが、参考まで。
BR
/Taro Kawahara
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