[OSM-ja] グッドデザイン賞とマップと地名について

Hiroshi Miura(@osmf) miurahr @ osmf.jp
2014年 7月 21日 (月) 04:50:56 UTC


三浦です。


昨年11月に、GoogleMapsがグッドデザイン賞で大賞受賞内定していたが、
政府が同意しなかったため、特別賞になったという話題がありました。

この時は、紛争地域の国境等の、各国政府による地名等が
食い違う地物に対する表現について、
日本国政府が要求する内容ではない場合がある、ことで
推奨されないような意見がついた、と報道(*1)されています。

まとまった報告等をしていなかったので、
現状のOSMの取り組み状況を一般に共有しようと思いました。


Wikiに書いたほうがいいと思ったので、
http://wiki.openstreetmap.org/wiki/JA:Government_policy_and_OSM
書きました。もう少し綺麗に整形できるといいなぁ。


数年前、学会の研究会で、筑波の国土交通省の研究所の
某会議室で発表した時も、同様の指摘というか質問をいただいていましたので、
それへの回答ともなります。


1) わたしの開発する地図タイル配信ソフトウエアTileMan(*2)では、
次のように取り組んでいます。

OSMを背景地図として情報システム等を運用する利用者は、
TileManを使用して、自分自身のアプリケーションの背景地図の
タイルをOSMを用いて配信できる。

この時、大規模な利用を行う利用者は、
*.tile.openstreetmap.orgでの配信をそのまま
使うのではなく、利用者がTilex、mod_tile, mapnik等を利用して
サーバを立てることが推奨される。

そうでない場合でも、利用者は、TileManを使うことができる。
*.tile.openstreetmap.orgでの配信を使いつつ、一部のタイルを
差し替えることができる。

これは、利用者が例えば、自治体や府省だったりして、その情報システムを
納品するシステム開発会社が利用するケースを考えてみてください。

自治体や各府省は、内閣官房等からの通知により、
地名等の取り扱いに留意することが要求されているそうです。
(*3)

そこで、(*3)で指摘されているような問題や、利用者の意向によって
問題と思われるタイルを置き換えることが可能となっています。

TileManでは、参考として、置き換え用のLiancourt Rock/竹島の
タイル画像データ(*4)を添付しています。

https://github.com/osmfj/tileman/tree/master/data

ちょっとプログラムを変えれば、静的な置き換えタイルを用いず、
たとえば電子国土Webが配信する地図タイルで差し替えることも
可能です。
やや高度な技術知識(LUA、GIS)が要求されますが、
このようなシステムをつくる事業者ならば問題ないでしょう。

カナダ在住の中国人のOSM利活用者が、同様に中国とインド等の国境紛争地帯についての
 タイル配信問題でこまっていて、本ソリューションについて、大いに興味をもっていました。
昨年のSotM13で講演したところ、このような話が有りました。



2) OpenStreetMap の編集合戦についてのルール等

OpenStreetMapの活動たる地理情報データベースの整備では
編集合戦等が有る場合があります。
OpenStreetMap FounationのDWGやLegal WGで、いろいろ
ポリシーが議論されています。(*5)(*6)


日本国政府が各府省や自治体等に通知したこととしては、
電子地図を背景地図として利用するときに、その表記がどうなっているか、
を調整して、それぞれの方針にしたがったレンダリングや配信をしてもらえば
いいので、マッパーの活動に対しては関係ない、です。
従って、切り離して考えたいと思います。



3)OpenStreetMap Japanホームページ及びOSMFJの配信するタイル

これらについては、現在、TileManを使っていて、サンプルの竹島のタイル画像も
サーバにインストールされています。

日本国内のタイルマップの利用者に対しては地図タイル配信で、
竹島のタイルについて、日本語表記を行う動作をさせています。(*7)(*8)

DBからストレートにレンダリングされる結果をマッパーとして確認したい場合は
他のレンダリング配信を利用されるといいでしょう。




4)利用者ガイドライン

重ねて言いますが、OSMFJのタイルサーバの配信は、 各府省、自治体の
システムで利用することを推奨するものではありません。
(ガイドラインの整備は、まだできてないです)

納入や運用する事業者等が、適切にシステム構成して、OSMの利用にあたって
利用者の方針等に適合するようにしてもらえればと思います。


具体的には、VMをひとつ用意し、LinuxとTileManを導入して、
竹島タイルをデータ領域に展開します。サーバ設定は、試験のためならば
プロキシーとして使う用のTileManサンプル設定を使うといいでしょう。

背景地図としてOSMを使うシステムは、TileManの導入されたサーバを
タイルサーバとして指定します。

すると、竹島について不都合の少ない表示になって、府省や自治体への
納入について、課題が減ることでしょう。



リファレンス

(*1)GoogleMapsとG賞の報道
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1311/07/news111.html

(*2) TileMan
http://osmfj.github.io/tileman/
https://github.com/osmfj/tileman

(*3) 片山さつき氏 ブログ
  http://satsuki-katayama.livedoor.biz/archives/7855139.html

(*4) 置き換えようのデータ
https://github.com/osmfj/tileman/tree/master/data

(*5)編集合戦についてのブログ
http://blog.emacsen.net/blog/2014/01/17/edit-wars-in-openstreetmap/

(*6)OSMFのポリシー
http://wiki.osmfoundation.org/w/images/d/d8/DisputedTerritoriesInformation.pdf

(*7)OSM Japanホームページ
https://openstreetmap.jp/map

(*8)竹島あたり
https://openstreetmap.jp/map#zoom=14&lat=37.24421&lon=131.86673&layers=B00

(*9) OSMFJ Tileサーバ
  http(s)://tile.openstreetmap.jp/{zoom}/{x}/{y}.png
  仕様は、*.tile.openstreetmap.org を使う時と同じ。
  WordPressやDrupalなどで使うときに、URLを置き換えることでOK.
  LeafLet.jsやOpenLayersでの利用がおすすめ。

(*10)OSM Japanサイトの開発用VMの再現ソース

 https://github.com/osmfj/vagrant-drupal

 同様のサイトを実現するときの参考になる。

以上




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