[OSM-ja] 鉄道駅の通り抜け用マッピング

Shu Higashi higa432 @ gmail.com
2017年 12月 1日 (金) 13:21:34 UTC


長文です。
方向性が見えてきたらWikiにまとめますが、ひとまずご意見を伺いたくこちらに投稿します。

# 趣旨
何らかの障害を持つ人にとって通行の妨げになるものや役に立つものを地図上に記載しておくことで、移動時の手助けとなる場合があります。理想的には現実に存在するあらゆる地物を識別して位置情報とともに地図上にマッピングして行ければ良いのですが、移動経路上にはあまりにも多くの情報があり、鉄道/地下鉄の駅には位置情報を取得しづらい屋内や地下の空間もたくさんあります。

精緻な3D/Indoorマッピングについては既に詳細な枠組みがいくつかまとめられているので、興味あればそちらをご参照ください。
<Indoor Tagging>
https://wiki.openstreetmap.org/wiki/Indoor_Mapping
https://wiki.openstreetmap.org/wiki/Simple_Indoor_Tagging

<Simple 3D Building>
https://wiki.openstreetmap.org/wiki/Simple_3D_buildings

<OpenLevelUp>: Indoor mapping のビューア
https://wiki.openstreetmap.org/wiki/OpenLevelUp
https://openlevelup.net/?l=0#18/35.71263/139.77700

<OpenStationMap>: 駅の3D/Indoor ビューア
https://wiki.openstreetmap.org/wiki/OpenStationMap
https://www.openstationmap.org/#17/35.71369/139.77738

OpenStationMapプロジェクトを率いているRoland
Wagner教授は日本に縁があり、数年前にいちど一緒に上野駅をレーザー距離計で計測しながらマッピングしたことがあります。その結果、上記のように上野駅のおおよそ半分ほどの構造を二人ががりで半日かけてマッピングしました。個人的な感想ですが、確かに手動での3D/Indoorマッピングも頑張ればできますが、その難易度や手間を考えると、限定的なエリアならまだしも、広くみんなでコンプリートしよう、というところまではかなり難しい気がしています。

そこで、ここでは網羅的・精緻なマッピングではなく、障害のある人が目的地までできるだけ独力で移動するために必要な、その駅を通り抜けて目的地にたどりつけるかを判断するための経路情報に着目したマッピングの枠組みを、PTv2を中心とした既存のタグ付けをベースに整理したいと考えています。

利用する交通機関、あるいは障害の種類や程度により役に立つ情報や利用シーンが異なるなど様々なバリエーションはありますが、いちどに議論すると収拾がつかなくなりそうなため、ひとまず以下の(私自身にとって切実なw)ユースケースに絞って話を進めてみます。

# ユースケース
車椅子利用者またはその介助者が、自宅などで鉄道/地下鉄を利用した外出計画を立てる際に、目的地にたどり着くための経路探索ができるように、osmデータ整備を目指します。自宅から最寄り駅、及び目的地近くの駅から目的地まではすでに「歩道マッピング」としてまとまりつつあるので、ここでは最寄り駅から目的地近くの駅までの経路を考えます。

# ユースケースの背景
大都市圏には地上、地下に立体的で複雑な鉄道ネットワークがあります。車椅子利用者から見てこうした立体構造の中を通り抜けるためには
1 横方向のスムーズな移動(まっ平か、緩やかなスロープで表面が滑らか)
2 タテ方向の機械による移動(自力では移動できないのでエレベータがベスト。階段やエスカレータは補助器具等があって係員2名のアシストがあれば通れるが、極力避けたい)
の2点が満たされている必要があります。
この2点を判断するための材料をマッピングすることを主眼に、その方法を整理します。

# 鉄道/地下鉄の駅と路線
地上/地下の鉄道を通り抜けるには駅の建物内(松戸駅とか湯島駅)を通り抜ける経路情報と、鉄道路線(JR常磐線とか東京メトロ千代田線)を通り抜ける(場合によっては乗り換える)経路情報の両方が必要です。後者の鉄道路線の経路はかなり複雑なため後回しにして、ひとまず駅の建物内の経路から始めます。

# 地下鉄駅のマッピング
地下鉄内の経路情報を整備するためには下記2点の大きな課題をクリアする必要があります。

1 駅の構造をどう把握してどう表現するか
2 位置情報が取れない(無線LANのAPやビーコンから相対的な位置を割り出したり、地磁気で判断したり、いくつか手法はあるが、まだ実用レベルものはない)

これらに対する現時点での中間的な解決策として以下のように考えています。

 鉄道事業者が公開している駅の構内図を参考に、実際にその駅を利用したり調査した知識と併せて、正確な図形や距離や位置を写し取るのではなく、経路案内に支障の無い範囲での、一部抽象化した図形やジオメトリとしてマッピングする。

まず著作権/ライセンスの面から言えば、構内図をそのまま転載するのはもちろん権利侵害にあたりますが、それを自分の経験や知識と照らして抽象的なつながりに読み替えながら(できれば現地の最新状態(=事実情報)とも突き合わせて)マッピングすることは権利侵害にあたらないと考えています。OSM側としてもlocal
knowledgeまたは事実情報なのでこれらを登録することについて問題は無いと考えています。このあたり、みなさまのご意見を伺えますと幸いです。

著作権的な問題が無い場合、まず対象となる地下鉄駅付近をサーベイして駅の出入口をマッピングします。その出入口を駅構内図にある出入口の位置と対応付けることで、地下の構造(プラットホーム階、改札階、地上階、それぞれの階層構造と人が移動する経路)と、そのおおよその位置を把握することができます。把握した構造を図形というより、やや抽象化した幾何形状のつながり具合に着目してマッピングして行きます。(これは簡易的な手法としての提案であり、サーベイ等に基づき、正確な形状、距離、位置をマッピングできる場合はもちろんその方がベターです。)

以下に、構内図の例と、それをマッピングした場合の案を並べてみます。

構内図の例:
https://www.tokyometro.jp/station/yushima/yardmap/index.html#adjacent

マッピングの案(黒:物理的な構造、青:マッピング案):
https://drive.google.com/file/d/1dK2sXe439tFIU7LD5pV35ftrkgw6zN-u/view?usp=sharing
(これらのエレメントをさらにpublic_transport=stop_areaタグでリレーションとしてまとめたり、経路のリレーションのメンバーに入れたりしますが、それはまた別途)

上記「マッピングの案」タグ付けの補足説明:
<0 地上階>
* 地下鉄出入口
 railway=subway_entrance をノードで打つ。ビルにある場合はその外周の該当位置に(ビルの玄関と同じように)打つ。
* エレベータ出入口
highway=elevator をノードで打つ。縦方向の経路は level=0;1 のように停止階で表現する。
<0;-1 地上階と改札階>
* 階段
highway=steps をラインで引く。実際には「階段->吹き抜け部(stairwell)->階段」のように90度づつ曲がりながら高度を上下して行くが、簡易的に直線で表現しても良いこととする。接続する階数は
level=0;1 のように表現する。
<-1 改札階>
* 通路をhighway=footway で表現。
* 改札を上記通路上に barrier=turnstile としてノードで打つ。
<-1;-2 改札階とプラットホーム階>
* 階段
highway=steps level=-1;-2
* エスカレータ
highway=steps level=-1;-2 conveying=yes
* エレベータ
highway=elevator level~-1;-2
<-2 プラットホーム階>
* public_transport=platform level=-2 ref=1;2

こうしたマッピングにより、経路探索ソフトウェアは
湯島駅のホームは島式1面
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%A9%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0#.E5.B3.B6.E5.BC.8F1.E9.9D.A2
であるため、綾瀬方面および代々木上原方面のいずれに向かう電車でも2つのエレベータを通り抜けて3番出口から外に出られる(湯島天神近く!)
という判断が可能になるのではないかと考えています。(実装の難易度は別にして)

クリアにすべきポイントが多すぎるため、先に進む前にひとまずここまでのところでみなさまのご意見をお聞かせください。
東


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